「兵庫経協」2023秋号

兵庫県経営者協会には経営側の視点で活動する「兵庫県経営法曹会」の メンバーが多数在籍しています。そんな弁護士陣に日頃のお悩みを相談 しませんか? 企業経営に関わることであれば、どんなことでも結構です。安心して相談 できる弁護士をご紹介しますので、是非、ご活用ください。 当協会ホームページのインフォメーションにある右の画像をクリックしてください。⇒ https://www.hpea.jp 兵庫県経営者協会 初回無料 (60分程度) いう問題が指摘されています。 この点ついては、学説上、次の二つの考え方が 示されています。 一つが消極説と呼ばれ、時季変更権の行使には 「他の時期に年次有給休暇を与える可能性」の存 在が前提となるが、退職前の一括時期指定の場合 には、他の時期に年次有給休暇を与える可能性が ないとして時季変更権を行使できないとする見解 です。 これに対し、「事業の正常な運営を妨げる場合」 であるのに時季変更権が指定できないとすること には疑問があり、退職前であれ、解雇予告期間 中であれ、要件が満たされるときには使用者は時 季変更権を有するとして、時季変更権の行使を認 める積極説も存在します。ただし、この積極説に おいても、労働者が退職時に年休の時季指定をし たことに関連して使用者側に責められるべき事情 があったと認められる場合には、時季変更権の行 使が権利濫用となって効果を生じないとされてい ます。 まとめると、「事業の正常な運営を妨げる場合」 に該当しない場合には、そもそも時季変更権の行 使は違法となりますが、これに該当する場合で あっても、時季変更権の行使ができるかどうかは 上記のとおり判断が分かれることになります。 3 考えられる他の対応策 上記のとおり時季変更権の行使が適法か否かは 判断が分かれることになるため、本件のような ケースでは、従業員に対しいきなり一方的に時季 変更権の行使を通知するという方法を採ることは リスクが高いといえます。 まずは従業員と事前に「年休の買上げ」につい て交渉を行うことが考えられます。「年休の買上 げ」とは、未消化となる年次有給休暇の日数に応 じて手当を支給する、その代わり退職日まで出勤 するよう求めるというものです。 その他、退職時には、従業員に対し、競業避止 義務や秘密保持義務等を課すことも考えられるた め、いずれにせよ退職にあたっては従業員と年休 の買上げを含めたこれらの点について話し合いを 行い、話し合いの内容について合意書等の書面を 作成することが望ましいでしょう。 9 兵庫経協2023年秋号

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