「兵庫経協」2023夏号

経協レポート KEIKYO REPORT 弁護士 髙橋 千秋 (オセアン居留地法律事務所) パートやアルバイトの休日出勤 居酒屋を営むX社は、コロナの影響 により客足が減ったことから、パート やアルバイトの従業員を削減しまし た。しかし、ワクチン接種が進んだこと等により 近頃客足が増加してきたことから、X社は徐々に 忙しくなってきました。そのような中、複数の従 業員がコロナに感染して急に出勤できなくなり、 一時的に人員不足が生じて困っています。残って いるパートやアルバイトの従業員は、基本的に 月・水・金曜日を出勤日としていますが、事前に シフトの変更を指示して、本来休日である火・土 曜日に出勤を指示することは可能でしょうか。ま た、その場合の注意点を教えてください。 1 休日に関するルール 使用者は、労働者に対して、毎週少 なくとも1回の休日を与えるか(労働 基準法(以下「労基法」といいます。)第35条1項)、 4週間を通じて4日以上の休日を与える必要があり ます(同条2項)。このように労基法で定められた 最低限の休日を「法定休日」といいます。 例えば週休4日の場合、そのうち1日は法定休日 で、残りの3日は法定外休日(所定休日)となります。 法定休日については、原則として労働をさせる ことはできません。 法定休日に労働をさせる場合には、①事前に法 定休日を振り替えるか、又は、②休日労働に関す る三六協定を締結して行政官庁へ届出を行い(労 基法第36条1項)、就業規則等において休日労働義 務を設定した上で、3割5分以上の割増賃金を支払 う必要があります(労基法第37条1項)。 他方、法定外休日(所定休日)に労働をさせる 場合には、基本的に就業規則等における休日労働 義務の設定があればよく、休日労働に関する三六 協定や割増賃金の規制は及びません。 2 事前に法定休日を振り替える際の注意点(①) 法定休日に労働をさせる方法のうち、①事前に 法定休日を振り替える場合にはどのような点に注 意する必要があるでしょうか。 まず、㋐就業規則などに使用者が法定休日を振 り替えることができる旨の規定が存在している必 要があります(契約上の根拠)。 必ずしも事前に法定休日を特定することは義務 付けられていませんが、就業規則の中で単に1週 間につき1日とするだけではなく、具体的に一定 の日を法定休日と定める方法を規定するよう行政 指導がされています(昭和63年3月14日基発150号)。 また、週休4日のいずれを法定休日にするかが 特定されていない場合、歴週において後順に位置 する日が法定休日になるとされています(平成11 年3月31日基発168号参照)。 加えて、休日振替の具体的事由と振り替えるべ き日を規定することが望ましいとされています (昭和63年3月14日基発150号)。 次に、㋑休日を振り替えた後の状態が週休1日 原則等の労基法上の規定に反していないことも必 要となります(強行法規違反の不存在)。 最後に、㋒実際に休日に労働がなされる前にあ らかじめ振替休日を定めておく必要があります。 基本的には法定休日の直前の出勤日の勤務終了時 までに了知させるべきでしょう。 これらが満たされている限り、使用者は労働者 の個別的同意を得ずに休日の振替を命じることが Q A Q&A 労働問題 9 兵庫経協2023年夏号

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