「兵庫経協」2023夏号

兵庫県経営者協会には経営側の視点で活動する「兵庫県経営法曹会」の メンバーが多数在籍しています。そんな弁護士陣に日頃のお悩みを相談 しませんか? 企業経営に関わることであれば、どんなことでも結構です。安心して相談 できる弁護士をご紹介しますので、是非、ご活用ください。 当協会ホームページのインフォメーションにある右の画像をクリックしてください。⇒ https://www.hpea.jp 兵庫県経営者協会 初回無料 (60分程度) できるとされています(横浜地判昭和55年3月28 日三菱重工横浜造船所事件)。 そして、振替休日は、あらかじめ定められた法 定休日を他の日に振り替えることですから、当初 の法定休日に労働をさせても法定休日労働とはな らず、休日労働に関する三六協定や割増賃金の規 制は及びません。 3 法定休日労働を行わせた場合の注意点(②) それでは、当日急遽欠勤が相次いだ等で事前の 休日の振替ができない場合はどうすればいいで しょうか。 その場合でも、前述のとおり②休日労働に関す る三六協定を締結して行政官庁へ届出を行い、就 業規則等において休日労働義務を設定していれ ば、法定休日労働を命じることができます。その 際には3割5分以上の割増賃金の支払いが必要とな ります。 なお、法定休日労働を行った場合には代休を付 与することが一般的ですが、これは法律上の義務 ではないため、前述の要件を満たしていれば代休 を付与しないことも可能です。 4 本件へのあてはめ X社では法定休日の特定がされていないため、 歴週において後順に位置する土曜日が法定休日と なります。 そうすると、火曜日は法定外休日(所定休日) となるため、就業規則等において休日労働義務が 定められていれば、シフト変更の指示をすること が可能です。この場合、代休の付与、休日労働に 関する三六協定の締結、届出や割増賃金の支払は 必要ありません。 他方、土曜日は法定休日となるため、前述の① ㋐~㋒の要件に基づき事前に休日を振り替えれ ば、シフトの変更を指示することができ、休日労 働に関する三六協定の締結、届出や割増賃金の支 払はいりません。 事前の振替ができない場合でも、前述の②の方 法によりシフトの変更を指示することはできます が、割増賃金の支払義務は免れません。 なお、就業規則に労基法の定めより有利な規定 がある場合にはそれが優先されます。また、休日 の振替の結果、1週間の労働時間が40時間を超え る場合には、三六協定の締結、届出と割増賃金の 支払が必要となります。加えて、本来休日である 日の出勤命令となるため、労働者側にやむを得な い事業がある場合等には業務命令が無効と評価さ れる可能性もあるでしょう。 5 まとめ 労働者に休日出勤を命じる可能性がある場合に は、就業規則において、使用者が法定休日及び法 定外休日(所定休日)を振り替えることができる 旨を明示しておく必要があります。また、法定休 日を特定し、休日の振替手続について明示してお くことが望ましいでしょう。 これらが定められていなかったり、不明確と なっていると、シフト変更の指示ができなかった り、意図しない割増賃金の支払いを求められるお それがあります。 また、当日になって急遽欠勤が生じた場合に は、法定休日の振替はできません。その場合に は、業務命令の有効性等の問題もあることから、 シフト変更について労働者の承諾を得ざるを得な い(労働者が承諾しない場合にはシフトの変更は できない)と考えるべきでしょう。 以上 10 兵庫経協2023年夏号

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