「兵庫経協」2023夏号

コロナ禍以降、経営環境は激変 コロナ禍以降、ビジネスモデルの根本的な見直 しが進み、働き方改革も相まって、「なくてはなら ない仕事」と「不要不急の仕事」との二極化が進 むことが予想されます。 また、企業は何のためにあるのか、その部署は 何のためにあるのかなどの「パーパス経営(企業 の社会的存在意義)」が問われるようになり、全従 業員で共有することが必要になってきました。 しかも、昨今の生成AIの進化でDX(デジタル トランスフォーメーション)がさらに進展してい きます。 この流れに乗り遅れてしまうと、将来、その企 業は生き残れなくなるリスクが出てきました。 さらに、追い打ちをかけて、「2025年問題」が近 づいてきました。 この「2025年問題」とは、人口が最も多いとさ れる団塊世代が、75歳の後期高齢者となり、「在 宅介護・在宅医療」が急増する事を指します。 そうなると、家族で介護を余儀なくされる従業 員が増え、ますますテレワークの需要は増えてく るでしょう。 これからの経営は、テレワークも視野に入れた 柔軟な働き方ができるようにしなければ、人材確 保も難しくなる可能性があります。 人材育成のマネジメントも大きく変化 女性活躍が推進され、外国人就労者やシニア人 材の活用等のダイバーシティの実現は、企業に とって避けて通れない課題となりました。 人口減少による労働力不足を補うという側面か ら考えても、誰もが働きやすい職場の実現は、人 事部門の抱える喫緊の課題であるといえます。 さらに、兼業・副業によってテレワークがます ます普及するにつれて、大都市圏一極集中から地 方分散への動きが加速し、今では地方に拠点を移 す企業も珍しくありません。 こうした急激な経営環境の変化に対応して企業 が存続していくために、企業の役員、管理職は、 過去の常識にとらわれず、現実を直視して、臨機 応変な判断ができる機敏な姿勢が求められます。 9割弱の企業で自社の人材育成施策が 環境変化に対応できていない 2020年1月21日に一般社団法人日本経済団体連 合会が発表した、「人材育成に関するアンケート 調査結果」では、コロナ禍での人材育成のあり方 について検討する必要があるとのコメントが出さ れています。(有効回答数/368社) このアンケートの結果、自社の人材育成施策が 環境変化に「対応できていない部分がある」との 回答は9割弱(88.8%)で、対応が必要となってい る要因(複数回答)としては、「就労意識の多様化 (ダイバーシティ経営の推進)」(72.6%)、「デジタ ル技術の進展」(61.6%)等となりました。 次に、人材育成施策の見直しとして具体的に取 り組んでいる事項(検討中を含む、複数回答)は、 「方針や戦略の見直し」「予算の見直し」「経営トッ プ等からのメッセージの発信」「対象の重点化」 「Off-JTの見直し」がそれぞれ6割を超えました。 社員の成長に向けた個別のコミュニケーション は、8割超(83.3%)が「上司」を主体として実施。 このうち、最も効果があると考えているコミュニ ケーションの方法(複数回答)は、「定期的に行う 面談」(88.9%)と「目標管理制度」(76.2%)が多 くなっています。【参考文献①】 そこで、注目されているのが、上司と部下の対 話の量を増やし、質を高める定期的な「キャリア 面談1on1ミーティング」の実施です。弊社のクラ イアントでも、この「キャリア面談1on1ミーティン グ」を積極的に取り入れる企業が増えてきました。 また、業種業態を問わず、多くの企業で、役員、 管理職を受講対象とした「人的資本経営のための 人材育成研修」も増えてきています。 心理的安全性の高い職場を作る部下と の「キャリア面談1on1ミーティング」 「キャリア面談1on1ミーティング」を行うことで、 組織の「心理的安全性の確保」が期待できます が、お互いに快く思っていない人同士が行う1on1 ミーティングは苦痛の時間になってしまいます。 特に、部下が自分の意見を言うと、上司から叱責 を受けるかもしれない、という気持ちを持っている 1 3 4 2 労働政策ニュース 人的資本を高めるための心理的安全性を確保する1on1面談の必要性 特 集 5 兵庫経協2023年夏号

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