「兵庫経協」2023春号

した中、公正性・公平性を表す「エクイティ(E)」の概念を付 加したDE&Iが注目されています。 企業組織が多様な人材を受け入れ、働き手一人ひとりが個 性や強みを最大限発揮できるよう、人権の尊重と公正性・公 平性の観点を踏まえ、適切にDE&Iを浸透させていくことは、 人材の確保・定着だけでなく、働き手のエンゲージメント向 上や継続的なイノベーション創出、ビジネスモデルの変革の 観点からも極めて重要です。 性別や国籍、年齢、障害の有無、雇用形態に加え、人種や LGBTQといったテーマにおいても、個々人で異なる特性等 を強く意識しながら、多様な人材が活躍できる環境を整備す ることが、人事労務管理での要諦と言えます。 なお、一般的に使われている「非正規」という言葉は、「正 規に非ず」というネガティブな印象を与えることから、経団 連では引用の場合を除き、「非正規労働者」でなく「有期雇用 等労働者」としています。 3.円滑な労働移動 DXやGX※の進展による産業構造の変革とそれに伴う労働需要の変化に対応し、持続的な成長を実現し ていくためには、成長産業・分野への円滑な労働移動を通じて、わが国全体の生産性を高めていくことが 不可欠です。硬直的とされるわが国の労働市場を、円滑な労働移動に適したものへと新たに作り上げる必 要があります。 なお、採用方法の多様化は、円滑な労働移動にも資する事ですが、「中途採用」という呼称は、「中途」と いうネガティブな印象を与えることから、経団連は「経験者採用」と表記しています。 ※DX:デジタルトランスフォーメーション、 GX:グリーントランスフォーメーション 企業における温室効果ガスの排出源である化石燃料や電力の使用を、再生可 能エネルギーや脱炭素燃料に転換することで、社会経済を変革させること 2023年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス 1.わが国企業を取り巻く経営環境 2022年の世界経済の実質成長率は3.1%と、2021年の5.9%に比べて低下する見通しです。世界的に物価 上昇圧力が残る中、欧米が金融引締めを継続し、大幅に景気が減速すれば、新興国も外需の落ち込みを背 景に厳しい経済環境に直面することが懸念されています。 日本経済は、エネルギー原材料価格の高騰、急速に進行した円安により、輸入物価が上昇したことで、 「コストプッシュ型」のインフレに直面しています。 生鮮食品を除いた総合の消費者物価は、2021年後半からエネルギー・食料品を中心に上昇し、2022年12 月は前年同月比+4.0%と41年ぶりの高い伸び率を記録しました。 2.連合「2023春季生活闘争方針」への見解 連合の2023闘争方針の基本的な考え方や方向性、問題意識などの多くは、経団連と基本的に一致してい ます。他方で、賃金要求の考え方では、月例賃金引上げに強いこだわりを示しながら、具体的な要求目標 として賃上げ分いわゆるベア分として3%程度、定期昇給相当分を含む5%程度としておりますが、この要 第Ⅱ部 今年の副題は、「人への投資」促進を通じた イノベーション創出と生産性向上の実現 3 兵庫経協2023年春号

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