「兵庫経協」2023春号

昨年は春季労使交渉が始まる時期にロシアによるウクライナ侵攻があり、1年がたった現在も 戦火は止んでいません。長引く新型コロナウイルスの流行に加え、この戦火により世界的なエネ ルギー価格や食料価格の上昇がありましたが、わが国においては円安の影響により、長く続いた デフレから急激に消費者物価および企業物価が上昇しました。 この物価上昇を受け、岸田内閣・連合・経団連の政労使が揃って賃上げムードを上げるなかで 今年の春季労使交渉が始まりました。 ここでは、春季労使交渉の前に経団連より発行された「経営労働政策特別委員会報告(経労委 報告)」の2023年版の内容をまとめています。 雇用・人事労務管理に関する諸問題 1.エンゲージメントと労働生産性の向上に資する働き方改革 企業と働き手を取り巻く環境が大きく変化している中、企業は労働生産性を向上させ、高付加価値の製 品サービスの提供を通じて社会課題の解決と収益の拡大を同時に図るSociety 5.0 for SDGsの実現に向け て取り組むことが求められています。 労働生産性の向上には、上の図の左側の式にあるように、分母となるインプット(労働投入)を効率 化する働き方改革「フェーズⅠ」を継続しながら、分子となるアウトプット(付加価値)の最大化を図る 「フェーズⅡ」を深化させていくことが不可欠です。そして働き方改革の鍵を握っているのは、働き手の 「エンゲージメント」で、企業はエンゲージメント向上に資する働き方改革の取組みを「人への投資」とし て位置付け、働き手から選ばれる企業組織を目指すことが重要です。経営トップと働き手とのコミュニ ケーションを拡充することや、エンゲージメントを高める各施策がイノベーション創出や生産性向上に寄 与しているのかを測定・評価し、改善に繋げていくことが求められます。 2.DE&I(Diversity,Equity&Inclusion)の浸透 持続的な成長の実現には、労働生産性の向上と共に労働参加率の上昇と処遇等の質的改善が不可欠で、 近年企業はそのために重要なダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の浸透に注力しています。こう 第Ⅰ部 労働政策ニュース ~経団連『2023年版経営労働政策特別委員会報告』(経労委報告)の要点~ 特 集 2 兵庫経協2023年春号

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