「兵庫経協」2022春号

したがって、業務外の傷病により休職してい た従業員が、休職期間中にアルバイトを行って いたとすれば、一般的には療養を支援しようと する会社の意図に反するものですから、この点 をとらえて、懲戒処分を課すことが可能ではな いかといえます。 3.もっとも、前掲マガジンハウス事件判決の事 案では、従業員が休職期間中にオートバイで頻 繁に外出していたこと、ゲームセンターや場外 馬券場に出かけていたこと、飲酒や会合への出 席を行っていたこと、宿泊を伴う旅行をしてい たことなども療養専念義務に反する行為ではな いかが問題となりましたが、健常人と同様の日 常生活を行うことが療養に資することがありう ると考えられていることは広く知られているし、 飲酒や外出により、病状を悪化させたことも認 められないとして、この点は問題視できないと しました。また、大学の事務職員と勤務してい た従業員が、病気休職中に、休職前から入学し ていた他大学の大学院に在籍し、修学していた という事案において、就業期間中にみだりに業 務に関係ない活動をしたとして、雇用契約上の 職務専念義務に違反する場合があるとしながら も、懲戒解雇を認めるほどの職務専念義務違反 は認められないとしたものもあります(大阪経 済法律学園事件 大阪地裁平成19年12月20日判 決)。 健康保険より、就業していないことを考慮す れば、かなり高額な傷病手当金を受け取ってい ることなどから、感情的には、自宅や病院での 治療、療養に専念すべきと考えてしまいがちで すが、病状の悪化を来さない日常生活までがす べて禁止されるわけではないことには注意が必 要です。 また、会社に在籍しながらの兼業、副業につ いても、職務専念義務との関係で悪印象を持ち がちですし、兼業、副業を就業規則等で禁止さ れている企業も多いかと思いますが、就業規則 で兼業・副業が禁止されていたとしても、兼 業・副業を理由とする懲戒が直ちに許されると いうわけではなく、例えば、長時間に及ぶ兼業 により、労務提供に具体的な支障が生じる場 合に限定されることとなります(小川建設事件 東京地判昭57年11月19日判決)。特に、働き方 改革の中では、兼業・副業が、新たな技術の開 発、オープンイノベーションや企業の手段、第 二の人生の準備として有効であり、兼業・副業 などの多様な働き方への期待が高まっていると さえされています。 したがって、アルバイトをしていたという点 も、ただそれだけで非難できるとは限らないこ とも念頭においてください。 結局、休職期間中に行っていたアルバイトは、 どういう内容なのか、どんな目的で行っていた のか、それにより症状に与える影響はどうなの かなど、具体的な事情を考慮して、復職を促す とか、懲戒を課すといった選択肢の中から、対 応を判断する必要があるといえます。 以 上 兵庫県経営者協会には経営側の視点で活動する「兵庫県経営法曹会」の メンバーが多数在籍しています。そんな弁護士陣に日頃のお悩みを相談 しませんか? 企業経営に関わることであれば、どんなことでも結構です。安心して相談 できる弁護士をご紹介しますので、是非、ご活用ください。 当協会ホームページのインフォメーションにある右の画像をクリックしてください。⇒ https://www.hpea.jp 兵庫県経営者協会 初回無料 (60分程度) 13 兵庫経協2022年春号

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