「兵庫経協」2022春号

業務外の傷病により休職している従 業員が、休職期間中にアルバイトを 行っていることが判明しました。健康 保険より傷病手当金が支払われていますが、当社 としてはどのような対応を取る必要があるでしょ うか。 1.休職とは、労働者を就労させるこ とが不能または不適切な事由が生じ た場合に、労働契約関係を存続させ つつ就労を免除または禁止することをいいま す。業務外の傷病により休職した場合、労働者 側の事由による休職となるため、就業規則等に 特段の規定がない限りは、給料の支払義務はあ りません。もっとも、健康保険の被保険者(任 意継続被保険者を除く。)については、傷病手当 金が支給されます。その額は、おおよそ直近の 給与額の3分の2程度となり、支給の期間は、支 給を始めた日から通算して1年6月間とされてい ます(健康保険法99条)。 2.休職中は、就労を免除されているとはいえ、 療養のために免除されているに過ぎませんか ら、労働者は療養に専念する義務があるといえ ます。その根拠について言及した裁判例は、見 当たりませんでしたが、敢えていえば、労働契 約という人間的継続的な関係にある当事者間に おいては、共に相手方の権利、利益を不当に侵 害しないように配慮すべきとする信義誠実義務 (労働契約法3条4項)に求める余地があります。 この点、生活費に窮したとして、休職中の従 業員がオートバイ販売店を開店していたことが、 二重就職を禁止する就業規則に違反するとして、 懲戒解雇した事案において、給与を一部支給さ れたまま、オートバイ店を開店、営業していた 行為は、会社の職場秩序に影響し、会社の従業 員の地位と両立することのできない程度・態様 のものである、オートバイ店の営業行為の服務 規律違反の程度は、当事者間の雇用契約におけ る信頼関係を損なう程度のものと認めるのが相 当として、懲戒解雇は解雇権の濫用とならない とした裁判例があります(ジャムコ立川工場事 件 東京地裁八王子支部平成17年3月16日判決、 なお、本件は業務災害として、休業補償給付の 支給を受けていた事案であったため、労働基準 法19条の解雇制限に反しないかも問題となって いました。)。また、私傷病による休職ではある が、給与規定に従い給与、賞与の全額を受けて いるという事案で、出社し会社に対する抗議活 動を行ったり、組合活動を行ったり、ブログに 会社や組合に関する記載を行っていたことにつ いて、療養専念義務という法的義務が観念し得 るかは別としつつ、療養を支援するという休職 の趣旨に反した行動をとった場合に、就業規則 に則した服務規律違反が問われることはやむを 得ないとして、解雇を有効としたものもありま す(マガジンハウス事件 東京地裁平成20年3 月10日判決)。 Q A 弁護士 藤原 孝洋 (神戸中央法律事務所) 病気休職中の従業員がアルバイトをしている場合、どう対応すべきか。 Q&A 労働問題 12 兵庫経協2022年春号

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