「兵庫経協」2022新年号

慮を行うことを求めるものといえます。 つまり、疾病を抱える従業員より会社に異動 希望があった場合には、会社に異動希望に応じ る義務がないといっても、従業員の疾病の種類、 程度、これについての医師等の意見を勘案して、 異動を含む一定の就業上の措置をとる必要があ ります。 従業員や主治医からの情報提供、産業医等か らの意見聴取を踏まえて、会社が疾病を抱える 従業員の職場復帰支援プランを策定するまでの 詳細については、厚生労働省より「事業場にお ける治療と仕事の両立支援のためのガイドライ ン」が発行されておりますので、ご参照下さい。 (4)①及び②を前提に同疾病が新型コロナウィル ス感染症の罹患後症状である点をどのように評 価するべきか 2021年(令和3年)12月現在、新型コロナウィ ルス感染症の新たな感染者数は、日本国内では、 いわゆる第5波の時に比べますと、減っており、 一般生活も徐々に制限の解除・緩和が進み始め ています。しかしながら、世界ではワクチン接 種が進んだにもかかわらず、大きなリバウンド が生じている国も多数あり、予断は許されない 状況です。 2021年12月1日に暫定版として発行された 「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)診療 の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント」 (以下「罹患後症状マネジメント」といいます。) によりますと、新たな感染者数が減少する一方、 新型コロナウィルス感染症罹患後、感染性が消 失したにもかかわらず、他に明らかな原因がな く、急性期から持続する症状や、あるいは経過 の途中から新たに、または再び生じて持続する 罹患後症状に悩む方も少なからずみられるよう になったこと、罹患後症状は3カ月ほどで約3分 の2は回復をしますが、不安が募るとさらに持 続・悪化することがあるが、いまだに明らかに なっていないことも多いとのことです。 罹患後症状マネジメントでは、新型コロナ ウィルス感染症罹患後の職場復帰支援に関して、 従業員の主治医に対して、会社と連携する際の 留意点を挙げております。主だったものとして、 ①会社が従業員に対して配慮(職業上の措置) を行うときは、何らかの根拠が必要になること から、ただ単に職場での配慮を求めるのではな く、その「医学的な根拠」を併せて示すことが 必要であること、②事業者が知りたいこと(ⅰ いつまで症状が続くのか、いつまで職場は配慮 することが望ましいのか、ⅱ具体的に職場では 何を配慮すればよいのか)を伝えること、ⅰの 説明例として「1カ月後に再診予定であり、それ までは〇〇の作業は作業時間や作業方法を軽減 するなど、配慮が望ましい。また、加療後、半 年程度は通院・治療を要す。通常1年以内に加療 は終了する。」、ⅱの説明例として、疲労感があ る人への就業軽減の場合に「勤務するならば半 日勤務が望ましい。」「連続作業が続くので1時 間に10分休み」「労働強度を下げる(屋外作業か ら、デスクワークへの一時的配転はどうか)」な どの具体的な記述が会社の配慮の助けになるこ と、③次のような3つの視点で会社の従業員に 対する配慮の内容を構造化すること(ⅰ患者の 健康や安全を脅かす状況への配慮(例:筋力低 下のある患者の高所作業を制限)、ⅱ環境調整 や障壁を変更・除外をする配慮(例:疲労感の 続く患者に対し休憩所利用許可)、ⅲ本来業務 を行う能力が損なわれた場合の配慮(例:味覚 障害のある患者の調理作業制限))などが挙げ られております。 (5)本件設問に対する回答 以上の検討から、本件説明に対する回答は、 当初の回答となります。 会社は、従業員が持ってきたというかかりつ け医の診断書の内容を正確に把握する必要があ りますので、産業医等がいる場合には、助言を 求めたり、主治医に対して、罹患後症状マネジ メントに即した対応を求めるなどして、当該従 業員の罹患後症状に応じた就業上の措置(現場 作業からデスクワークへの一時的配置も含まれ ます。)や治療に対する配慮を個別具体的に考 える必要があります。 以上 15 兵庫経協2022年新年号

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