「兵庫経協」2023春号

経協レポート KEIKYO REPORT 営業所の補助業務を長年担当して いるパート社員から申し出があり、無 期転換する必要があります。 ずっと補助業務のみを担当してもらいたいの で、正社員とは違う処遇とし、昇進や定期昇給、 退職金の対象外としたいのですが、問題がありま すでしょうか。 1 労働契約法18条と無期転換 同一の使用者との間で、2回以上有 期労働契約を締結し、その契約期間が通算して5 年を超える労働者は、使用者に対し、無期労働契 約の締結の申込みをすることができ、この場合、 使用者は当該申込みを承諾したものとみなされま す(労働契約法18条1項前段)。 これがいわゆる「無期転換」です。 2 無期転換後の労働条件 無期転換後の労働条件は、原則として、従前の 有期労働契約の労働条件と同一となります(労働 契約法18条1項後段)。設例では、無期転換後も 「補助業務のみを担当してもらいたい」「昇進や定 期昇給、退職金の対象外としたい」とのことです が、従前の有期労働契約の労働条件もそのような ものであったならば、無期転換後も当該労働条件 を継続することは、原則として可能だということ になるでしょう。 ただし、上記の労働契約法18条1項後段は、 労働条件(契約期間を除く。)について別段の定め がある場合には、労働条件が変更され得る旨を規 定しています。「別段の定め」としては、就業規則 や個別の労働契約等が挙げられます。したがっ て、例えば就業規則に無期転換後の労働条件に関 する定めがある場合は、それに従うことになるで しょう。 ただ、いうまでもありませんが、少なくとも、 「無期転換が行われた後」の段階で就業規則を制 定又は改正して当該無期転換者の労働条件を変更 するためには、いわゆる「就業規則の(不利益)変 更」の問題として、変更内容が合理的であること 等の要件が必要となります(労働契約法10条)。 また、「有期労働契約の締結後、無期転換前」の 段階で就業規則を制定又は改正して無期転換後の 労働条件を変更する場合については議論があり得 ますが、この場合も、実質的には労働条件を変更 するものと見て、上記と同様に、変更内容が合理 的であること等の要件が必要となると考えておく ことが安全だと思われます。 Q A 弁護士 乗鞍 佳孝 (乗鞍法律事務所) 無期転換するパートを、昇進や定期昇給の対象外とできるか。 Q&A 労働問題 12 兵庫経協2023年春号

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