女性の結婚と出産後の継続就業が一般化し、社会や人口、ライフスタイルが変容していく中、「家族手 当」のあり方にも変化が見られます。厚生労働省では、「年収の壁」への対応策として「配偶者手当*への対 応」が取り上げられており、企業に見直しを促しています。そこで、本稿では、「家族手当」にまつわる社 会の動向と具体的な見直し案について、説明を進めたいと思います。 1 配偶者に「家族手当」を支給しない企業が増えています 「家族手当」の支給状況について 社会の動向を知るためには、人事院 の「職種別民間給与実態調査」が参 考になります。「家族手当」制度があ る企業の割合は、この10年ほどで大 きく変わっていませんが、一方で、 配偶者に「家族手当」を支給しない 企業の割合は、2015年の9.7%に対 し、2023年は25.5%と大きく増加し ています(図1)。 また、配偶者に「家族手当」を 支給している企業のうち、配偶者 の収入に制限がある企業の割合は 87.4%。収入制限の額は、103万円が 41.9%、130万円が35.0%と、多くの 企業で、配偶者が「家族手当」を受 給できるのは、その収入が130万円 以下の配偶者に限られています。 厚生労働省は、「家族手当」の収入 要件が女性の就業調整の原因となっ ていることから、企業に「家族手当」 の見直しを促しています(図2)。厚 生労働省のホームページでは、企業が 実際に見直しを進めることができる よう、見直しのフローチャートを含む パンフレット等も公開されているの で、すでに見直しに着手されている 企業も多いのではないでしょうか。 *「配偶者手当」は、一般的には「家族手当」として配偶者以外も含む家族を対象とする企業が多いことから、本稿では 「家族手当」として取り扱います。 図2 出典:厚生労働省「配偶者手当」の在り方の検討に向けて(リーフレット令和6年4月改訂版)より 図1 家族手当制度の有無・配偶者への支給状況 2015 2023 家族手当制度がある 76.5 % 75.5 % 配偶者に家族手当を支給する (90.3) (74.5) 配偶者の収入による制限がある [84.9] [87.4] 103万円 <68.8> <41.9> 130万円 <25.8> <35.0> その他 <5.4> <23.2> 配偶者の収入による制限がない 15.1 12.6 配偶者に家族手当を支給しない (9.7) (25.5) 家族手当制度がない 23.5 24.5 (注)1 ( )内は、家族手当制度がある事業所の従業員数の合計を100とした割合。 2 [ ]内は、配偶者に家族手当を支給する事業所の従業員数の合計を100とした割合。 3 < >内は、配偶者の収入による制限がある事業所の従業員数の合計を100とした割合。 4 従業員数ウエイトを用いて算出した割合。 出典:人事院「職種別民間給与実態調査」より 労働政策ニュース 特 集 「家族手当」を見直しませんか? 4 兵庫経協2024年夏号 収入 制 限の 額
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