突然ですが、歯1本の価値ってどのくらいでしょ うか? 人体の一部を金額に換算するのは少し不 謹慎ですが、わかりやすい目安として今は目をつ ぶっていただけると幸いです。 今、インプラント治療の相場は1本あたり30〜50 万円です。では「50万円と引き換えに歯を1本抜い ても良いか?」と言われても、断る方が多いので はないでしょうか。ではいくらなら・・・? 歯は 28本ありますので、頭の中に思い浮かんだ金額を 28倍してみて下さい。結構な財産があなたの口の 中にあることになります。参考までに、平成14年、 東京地裁にて1本の奥歯の不適切な抜歯の損害賠 償請求に対して150万円の支払いを命じたという 判例があります。仮に1本150万円としたら28本で 4200万円! なかなかの金額ですね。 ここで改めて歯の役割を考えてみましょう。 まずは「咀嚼と嚥下」です。歯が少なくなると、 食べられる物に制限ができます。特にスルメやお 漬物等、奥歯を強く噛み締める必要がある食べ物 が噛めなくなってきます。次に「発音」です。歯が そろってないと息が漏れてしまいますので、はっ きりと話をすることができません。そして最後に 「審美(見た目)」です。やはり白い歯でニコッと 笑えることは精神的にも若々しくいられることに 繋がります。 自分の好きなのを食べて、家族・友人とおしゃ べりをして、たくさん笑うこと。考えてみると、 これらは人生の楽しみの大部分なのではないで しょうか。歯があることの価値はまさにプライス レス。お金では買うことができない大切な機能を 担っていることがわかります。 昨今、様々な場所で「歯は大切ですよ」「健康は お口から」と言った言葉を目にすることが増えて いると思いますが、それには大きく2つの理由が あります。一つは、口の健康が全身の健康に様々 な影響を与えることが分かってきているからで す。糖尿病を始めとして、口の中の環境の悪化が 全身に悪影響を及ぼすことは常識になりつつあ ります。もう一つは平均寿命の延伸です。かつ て、生物としてのヒトの寿命は35年〜50年だった と言われています。現在でも、40代までの読者の 方は、普段、歯でお困りのことは少ないかもしれ ません。しかし今や人生は100年時代。私たちは DNAの上で想定されているであろう期間を遥かに 超えて歯を長持ちさせる必要があるのです。正直、 なかなかハードなミッションであります。 それでは、歯を失わないために私たちができる 最善の行動は何なのでしょうか。歯を丁寧に磨く こと? 甘いものに気を付けること? もちろんそ れも大切ですが、やはり一番はかかりつけの歯科 医院を持つことです。厚生労働省もかかりつけ医 の存在を重要視しており、平成28年の診療報酬改 定では歯科にも「かかりつけ歯科医機能強化型診 療所」が新設されました。この加算は、定期的に 口腔管理をすることで歯周病やむし歯を防ぎ、歯 を失うリスクの軽減を狙ったものです。歯を守る ことが結果として全体の医療費の削減になること が証明されてきた裏付けでもあります。 歯を長期に守るためにはセルフケアだけでは十 分ではありません。歯周病・むし歯のリスクは人 によって異なりますし、そもそも歯並びや歯の数 を含めた口の中の状態は千差万別です。一人一人 に合ったケアの方法や生活習慣の見直し等、不安 なことを気軽に相談できる歯科医師・歯科衛生士 を持つことが何より大切です。 皆様も、プライスレスな大切な歯を守るために、 ぜひ信頼できるかかりつけの歯科医院を探してみ てください。 【歯の健康シリーズ】 T O P I C S 兵庫県歯科医師会 地域保健委員会委員 國貞 浩平 気づいていますか? あなたの口の中にある大切な財産 16 兵庫経協2024年春号
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