経協レポート KEIKYO REPORT 弁護士 中田 篤志 (篤志法律事務所) 有期労働契約の不更新(雇止め)の可否と手続上の留意点。 当社には60歳定年後再雇用の従業 員Aがおり、1年契約を3回更新しまし たが、この度、雇止めを検討しています。 上司によると、Aは指示に反発することが増え、 パフォーマンスが急低下しており、認知症の疑い があるそうです。他方、Aは「仕事の進め方で上 司と意見が合わないが、業務はこなしている」と 語り、更新を希望する模様です。 再雇用制度は65歳までと規定していますが、 雇止めは可能でしょうか。また、手続上、気をつ ける点を教えてください。 合理的理由又は相当性を欠くのでな い限り、雇止めが可能ですので、まず は事実確認を進めてください。雇止め をするときは、契約期間満了日の30日前までに予 告し、従業員の求めがあれば理由を記載した証明 書を交付してください。 1 雇止めの要件 期間の定めのある労働契約(有期労働契約)に ついて、①労働者が契約更新を希望し、それを期 待することに合理的な理由がある等の場合であっ て、②使用者による更新拒絶が客観的に合理的な 理由を欠き社会通念上相当であると認められない ときは、使用者は更新を拒絶できず、従前と同 一の労働条件で契約が成立します(労働契約法19 条。丸数字は説明のため筆者追加)。 ①労働者の合理的期待等は、雇用の臨時性・常 用性、更新回数、雇用の通算期間、契約期間管理 の状況、雇用継続を期待させる使用者の言動など を総合して判断されます。 ②雇止めの合理的理由等は、解雇権濫用法理 (現在の労働契約法16条)と似ていますが、雇用保 障の程度は有期労働契約であることを前提とした ものでよいとされます。 つまり、そもそも①労働者の合理的期待等がな い場合や、(期待があっても)②雇止めが合理的理 由等を欠かない場合には、雇止めが可能です。 2 雇止めの手続 有期労働契約のうち、3回以上更新されたもの 又は通算1年超であるものについて更新しない場 合、使用者は、労働者に対し契約期間満了日の30 日前までに予告する必要があります(有期労働契 約の締結、更新及び雇止めに関する基準1条)。 そして、労働者が求めたときは、使用者は、「更 新しないこととする理由」の証明書を交付する必 要があり、更新しなかった後に労働者が求めたと きは、「更新しなかった理由」の証明書を交付する 必要があります(同基準2条)。 この理由には、契約期間満了以外の内容を記載 する必要があり、たとえば「不更新の合意をした ため」、「更新回数上限を超えるため」、「担当業務 終了・中止のため」、「事業縮小のため」、「業務遂 行能力が不十分なため」、「職務命令違反、無断欠 勤等、勤務不良のため」などが想定されます。 理由の明示に違反すると、行政指導を受ける可 能性があります(労働基準法14条3項)。また、記 載しなかった理由を後日追加することや、いった Q A Q&A 労働問題 12 兵庫経協2024年春号
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