「兵庫経協」2024新年号

皆さんこんにちは。兵庫県歯科医師会地域保健委員 会の前田です。 突然ですが、私は今年で45歳になりました。このご ろ昔はあまり感じていなかった疲れや体の不調を感じ る事が多くなったような気がします。やはり健康で毎 日が過ごせることが何より大事だと身に染みています。 今回は「健康で長生き」をテーマにしたいと思います。 令和元年(2019年)の日本人の平均寿命は女性が87.45 歳、男性が81.41歳と、世界でもトップクラスの水準で あることは周知の事実です。昨今、厚生労働省は国民 の健康の増進の総合的な推進を図る基本的な方針「健 康日本21(第二次)」の中で、「健康寿命の延伸」を大き な目的の一つに位置付けました。この報告書の中で の健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限さ れることなく生活できる期間」と定義づけられていま す。誰もが、健康に長寿を全うしたいと願うものであ り、要介護状態になってしまうことを回避したいと思 うのは当然だと思われます。では、現状で日本人にお ける平均寿命と健康寿命の間にはどれほどのかい離が あるのでしょうか。令和3年(2021年)12月10日に開催 された「第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会」 の資料を下図に示しました。 同資料では、令和3年(2021年)時点の平均寿命と健 康寿命との間には、男性では約9年、女性では約12年も かい離があると報告されています。これはあくまで平 均値ということですが、多くの高齢者は寿命が尽きる ※厚生労働省 第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会「資料3-1 健康寿命の令和元年値について」3頁 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf までに、何らかの健康上の問題で日常生活が制限され た期間を過ごしているということがわかります。 また、令和4年(2022年)国民生活基礎調査の結果で は、上図の通り要介護になる主な原因として認知症が 最も多く、次いで脳血管疾患(脳卒中)、骨折・転倒、 高齢による衰弱、関節疾患…といった順になっています。 つまり、いかに認知症にならないか、ということが 要介護にならないための大きな課題といえます。そこ で認知症と口腔内の関係性を見たいと思います。歯と 健康の関係では、認知症が残存歯の数と明らかな関係 をもっています。認知症と認定されていない65歳以上 の4,425名を対象に行った4年間の追跡調査では、年齢、 持病の有無、生活習慣などに関わらず、歯がほとんど ないのに義歯を入れていない人は、20本以上歯が残っ ている人の1.9倍認知症発症のリスクが高いことがわ かりました。同じ調査では、歯がほとんどなくても義 歯を入れていると、認知症のリスクを約4割低下でき る可能性も示されています。 以上のように、歯の多い人ほどまたはすでに自分の 歯を喪失しても、入れ歯等で口腔機能を回復できてい る高齢者は認知症になりにくいということが疫学研究 からわかってきています。歯が多く残っていることや、 すでに喪失していても入れ歯等で口腔機能を維持する ことは要介護になりやすい疾患を予防し、健康寿命を 延伸する可能性があると思われます。また、最期まで 自分の口から美味しいものを食べられるように、ぜひ かかりつけの歯科医師にご相談ください。 厚生労働省「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」36頁 第13表より作成 【歯の健康シリーズ】 T O P I C S 兵庫県歯科医師会 地域保健委員会委員 前田 晋三 健康で長生きするために! 18 兵庫経協2024年新年号

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