「兵庫経協」2023秋号

口腔がんと言えば、数年前にある女性タレント が罹患されていたことが報道されて、大いに話題 になりました。それまでは認知度が低かったと思 います。 がんとは、細胞分裂時に発生する遺伝子の異常 のより発生した異常細胞が無秩序に増え続ける病 気で、周りに進展(浸潤)リンパ節や他臓器に転 移します。1つのがん細胞が1cmになるには10~ 20年、2cmになるには1~2年と言われています。 ①口腔がんとは? 顎口腔領域(頬粘膜、歯肉、硬口蓋、舌、口 腔底)に発生する悪性腫瘍の総称です。病理組 織学的には90%以上が扁平上皮癌です。 ②口腔がん患者数、好発年齢 わが国における口腔がん罹患数は、2005年が 6900人、2015年が7800人となっています。 口腔がんは、全身の全てのがんの1%。全頭頚 部がんの約40%とのことです。 男女比は3:2と男性に多く、年齢は60歳代が 最多です。今後の予想として高齢化に伴い増加 傾向にあり、女性および若年者の発症と増加が 予想されています。 AYA世代[AYA(アヤと読みます)とは Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人) のことで、一般には15~39歳の世代とされてい ます。」の口腔がんの特徴として、好発部位は舌 で女性に多く再発率が高いと言われています。 ③口腔がんの好発部位 1.舌 60.0% 4.頬粘膜 9.3% 2.下顎歯肉 11.7% 5.上顎歯肉 6.0% 3.口底(口腔底) 9.7% 6.硬口蓋 3.1% ④口腔がんの危険因子 喫煙と加齢 飲酒(アルコールの代謝産物アセトアルデヒド によるもの) 慢性の不良機械的、化学的刺激(傾斜歯、う蝕 歯、不良補綴物によるもの) 炎症による口腔粘膜の障害(炎症性サイトカイ ン)とウイルス感染 ※口腔、咽頭、食道、胃は同一の発癌環境にあ るとされ、口腔がん患者はこれらの部位に多 発性の癌(重複癌)を有する可能性が高いで す。 ⑤早期発見がベスト 一般的にがんの治療法は、手術治療、薬物治 療、放射線治療の3つです。がんの種類によって 生存率が異なりますが、病期が進むと生存率が 下がります。口腔がんでも同様で、Stage1での 5年生存率は95.8%です。早期発見に一番近い位 置にいるのは歯科医師と歯科衛生士です。先ず は、かかりつけ歯科医師に診てもらうのが一番 です。 また、口腔がん検診を実施している自治体や 機関(例えば神戸市歯科医師会など)もありま すので、お問い合わせください。 ⑥がん診療連携登録歯科医 国立研究開発法人国立がん研究センター対策 情報センターが運営する「がん情報サービス」 ganjoho.jpに、がん診療連携登録歯科医名簿が 掲載されています。 がん診療連携登録歯科医とは、厚生労働省の 委託を受けて日本歯科医師会が主催する「全国共 通がん医科歯科連携講習会」を受講し、がん患者 さんへのお口や歯科治療についての知識を習得し た歯科医師のことです。名簿をご覧になりたい方 は、上記ホームページに都道府県ごとに掲載され ておりますのでご確認ください。 【歯の健康シリーズ】 T O P I C S 兵庫県歯科医師会 地域保健委員会委員 松田 義弘 口腔がんについて 13 兵庫経協2023年秋号

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