「兵庫経協」2021夏号

今後難しくなる可能性もあるといえるでしょう。 3 無許可 の 副業 ・ 兼業 を 理由 とする 懲戒処分 が 認 められるケース 2で述べた基本的な考え方からしますと、会社 の職場秩序に影響する場合や、会社に対する労務 の提供に支障が出る場合には、職場秩序への影響 や労務提供への支障の程度に応じた懲戒処分が認 められます。 会社の職場秩序に影響する場合としては、競業 会社の取締役に就任して営業行為を行っていた ケース(東京地裁平成3年4月8日判決)、会社が疲 労回復などのために従業員に対し特別加算金を支 給しつつ残業を廃止していた期間における同業他 社での副業のケース(福岡地裁昭和47年10月20日 判決)、労働災害による休業中の期間に自営業の 経営を行っていたケース(東京地裁八王子支部平 成17年3月16日判決)において、懲戒解雇が認めら れています。 また、労務提供に支障をきたす場合としては、 長時間の兼業が行われていたケースにおいて、普 通解雇が認められた裁判例があります(東京地裁 昭和57年11月19日決定)。 4 新型 コロナウイルスの 影響 による 休業 の 場合 今回のご質問の新型コロナウイルスの影響によ る休業中の副業・兼業のケースにおいても、同業 他社での副業の場合、特に、緊急事態宣言などに よる営業時間制限を踏まえて休業措置をとってい るにもかかわらず、そのような営業時間制限を遵 守していない同業他社で副業を行っていたという ケースでは、懲戒解雇が認められる可能性がある と考えられます。 そのような事情がない場合には、職場秩序への 影響の程度や、休業措置の終了後の労務提供への 支障の程度を総合考慮して、懲戒処分の有無・程 度を判断することになるでしょう。 5 副業 で 得 た 収入 を 差 し 引 いて 休業手当 を 支払 うことについて 結論としては、労働基準法上の休業手当(平均 賃金の6割)について、副業で得た収入を差し引い て支払うことや、返金を受けることは認められま せん。 労働問題について詳しい方の中には、解雇期間 中の中間収入について、4割までは控除できると いう最高裁があると記憶している方がいるかもし れません。 最高裁は、正確には、平均賃金の6割に達するま での部分については利益控除の対象とすることが 禁止されていると述べておりますので、労働基準 法上の休業手当部分については副業で得た収入を 差し引くことができないということになります。 具体的には、平均賃金が30万円の場合には、18 万円を下回る支払いは認められません。 就業規則に休業手当の上乗せ規程が定められて いる会社や、今回に限っての特別措置として、平 均賃金の6割以上の休業手当を支払っている会社 の場合には、6割以上の部分が副業との差し引き が可能な部分となります。 以上 13 兵庫経協 2021 年夏号

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