「兵庫経協」2021夏号

当社 は、 就業規則 で、 会社 の 許可 な く 他人 に 雇 い 入 れられることを 懲戒解 雇事由 として 定 めていますが、 新型 コ ロナウイルスの 影響 による 業績不振 に 伴 う 休業中 ( 休業手当 は 支給 )に 副業 を 無断 で 行 った 者 を 懲 戒解雇 できるでしょうか。また、 当該社員 が 副業 で 得 た 収入 を 差 し 引 いて 休業手当 を 支払 ったり、 返金 を 受 けたりすることはできるでしょうか。 緊急事態宣言 などによる 営業時間制 限 を 踏 まえて 休業措置 をとっているに もかかわらず、そのような 営業時間制 限 を 遵守 していない 同業他社 で 副業 を 行 っていた というケースでは、 懲戒解雇 が 認 められる 可能性 があると 考 えられます。また、 労働基準法上 の 休 業手当 ( 平均賃金 の6 割 )については、 副業 で 得 た 収入 を 差 し 引 いて 支払 うことや、 返金 を 受 けるこ とは 認 められません。 1 はじめに 新型コロナウイルスの影響により、企業の事業 活動に多大な影響が出ており、企業によっては、 従業員の休業を余儀なくされたりする事例も少な くない状況となっております。 また、多くの企業では、就業規則において、会 社に無断で副業・兼業を行った場合を懲戒事由と して定めていると思われます。 そのため、ご質問のように、新型コロナウイル スの影響により従業員の休業を実施している企業 においては、休業中に従業員が会社に無断で副 業・兼業を行うというケースが生じてしまいます。 なお、本稿では、休業が不可抗力であるといえ るケースは除外しており、休業手当の支払いが妥 当するケースを前提にしています。 2 無許可 の 副業 ・ 兼業 に 対 する 基本的 な 考 え 方 無許可の副業・兼業が問題となった裁判例の傾 向を見ますと、会社に無許可の副業・兼業であっ ても、会社の職場秩序に影響せず、会社に対する 労務の提供に格別の支障がないものであれば、就 業規則違反として懲戒処分を行うことはできない という基本的な考え方を読み取ることができます (京都地裁平成24年7月13日判決など)。 副業・兼業が会社の就業規則が基本的には及ば ない労働者の私生活における行為であることから、 上記の考え方は妥当だと考えられています。 さらに、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28 日働き方改革実現会議決定)を踏まえ、厚生労働 省において副業・兼業の普及促進を図っている現 状からしますと、副業・兼業に対する懲戒処分は Q A 弁護士 辻 のぼる (神戸NT法律事務所) 新型コロナによる休業中に会社に無断で副業・兼業を行った者を解雇できるか。 また、当該社員が副業で得た収入を差し引いて休業手当を支払うことはできるか。 Q&A 労働問題 12 兵庫経協 2021 年夏号

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz