「兵庫経協」2021春号

尼崎市の「にしむら歯科」院長、西村 望と申し ます。大学卒業後、医学部の口腔外科に入局し、 口腔外科医の研修ののち、医学部麻酔科にて麻酔 研修、さらに歯学部歯科麻酔学講座へ移籍後、総 合病院麻酔科勤務した後、尼崎市で開業しこの春 でまる12年になります。 行く先々でも、本拠地以外にいろんな医療機関 の非常勤歯科医等をしていましたので、今までの 勤務歴は10か所以上になり、なにかの折に勤務経 歴を書く際などには自分でも「いろんなところで 仕事しているなぁ」と感じます。 はじめは一般歯科というよりも歯科領域の外科 手術を専門とした口腔外科を専門とするつもりで 勉強していたのですが、高齢化に伴い高血圧や心 臓病など、様々な基礎疾患を持った患者さんの治 療の際の全身管理などの必要性を痛感し、麻酔科 での勉強を…と、その時その時で興味を持った分 野を勉強しているうちに、気付くとなんだかいろ んなところで多くの先生方と仕事をしていたなぁ と感じます。 歯科医師は一般的にあまりあちこちで勤務する 人というのは少なく、最初の専門分野である程度 勉強して、そのまま病院に残るなり開業するな りというケースが多いので、歯科医師の中では ちょっと変わった経歴と言えるかもしれません し、実際私も移籍などの際に「興味があるからと 次々に移っていると『専門』があやふやな歯科医 師になるぞ」と忠告されることもありました。 私としては特に将来のためにこの勉強をしよう というよりも、あくまでその時その時で自分の中 で気になること、知りたいこと、興味があること を勉強しようというつもりでやってきたのです が、周りから見たら寄り道だらけの経歴に見えた んだろうなぁと感じます。 寄り道が長かったもので、開業した年齢も普通 よりも少し遅めではあったのですが、開業した頃 から歯科のみならず医療・介護制度全般で「包括 ケアシステム」という、医科、歯科、薬科、看護、 介護など様々な職種が連携して高齢化社会、要支 援・要介護者の増加に対応していく体制に変革す るという制度変更がはじまり、歯科医師会でもそ のための担当責任者を立てないといけないとな り、ある日当時の市歯科医師会会長(最初所属し た口腔外科学講座の大先輩)から電話で「4月から 担当理事になれ」と言われそれ以来ずっと歯科医 師会役員も兼ねています。歯科医師会は、まあこ のような団体ではありがちなのですが比較的旧弊 な体質でもあり、開業2年目でいきなり役員って あんまりないのですが当時の会長曰く「お前の寄 り道だらけの経歴が役に立つ時だろう」との鶴の 一声で役員就任となりました。 たしかに、いろんな医療の現場で仕事をし、 様々な場面、職種の方と仕事をしてきた経験は、 役員となってからも役立っていると感じます。 まだまだ周知されているとは言い難いですが、 例えば介護予防や重度化防止で歯科が寄与できる 部分は皆さんが思うよりもずっと多いものです。 コロナのさなかで、高齢者の外出や運動の機会が 減少し介護度が悪化傾向にあるという状況の対応 策などで多職種の方と会議(WEB会議ですが)の 回数も増えています。その時は何も考えずただ自 分の興味に従って寄り道してきましたが、今、そ の寄り道の経験がほんの少しでもいろんな方の役 に立っているのなら寄り道も悪くないなと感じて います。 【歯の健康シリーズ】 T O P I C S 「 寄 り 道 」も 悪 くない 兵庫県歯科医師会 地域保健常任委員会委員 西村 望 16 兵庫経協 2021 年春号

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