「兵庫経協」2024秋号

尼崎市で開業している西村と申します。私はもと もと、外科的な処置を必要とする口腔外科や心疾患や糖 尿病など、様々な基礎疾患を持った患者さんに対し ての有病者歯科が専門ですが、開業後は一般歯科と ともに訪問歯科診療を含む高齢者の方を中心とした 高齢者歯科、訪問歯科の比率が多くなっています。 最近、皆さんもよくお聞きになると思いますが人 生100年時代と言われています。じっさいにわたし の患者さんでも百歳の方が何人かおられます。百歳 の方が増えて、長寿が当たり前になってきたことは 素直に素晴らしい事だと思います。でも同時に私た ち医療関係者や患者さんだけでなく、国民の方すべ ての「健康」に対する意識をブラッシュアップしな いといけないタイミングが来ているのではないかと 思う事が増えてきました。 先日も15年ほど前から通院されていて、この5年 ほどは通院が難しくなり訪問診療させていただいて いる患者さんのところへうかがった際、ふともう すぐお誕生日なことに気付いて「何歳になるんでし たっけ?」「それがねえ、101歳らしいのよ。自分で もびっくりするんだけど」「え!100歳超えはったん ですか~!!そりゃ最初診せていただいたの85歳く らいでしたから、そうなりますか~」と患者さん、 ご家族と大笑いしながらお話ししていたのですが、 その患者さんが「まさか自分が100歳超えるなんて 考えてもなかったんやけどねぇ」とおっしゃってま した。 じつはこれ、90代超えた方は皆さんおっしゃりま す。「こんな長生きするなんて考えてもなかったん やけど」とか「この歳になるつもりなんてなかっ たんやけど」 健康でもやはり、百歳を超えると徐々にできな いこと、不自由なことが増えてきます。それなり に物忘れも多くなりますし歩くこともなかなか大 変になってきます。ともすれば健康=なに不自由 なく過ごせることと考えがちですがやはり百歳近 い超高齢の方では健康であってもなに不自由なく 過ごすことは困難になってくるのが実情です。 そんななかでも、百歳近い方、百歳を超えた方 で普段の生活をほとんど自立して過ごしておられ る方に共通することがしっかりと食事をとること ができる方がほとんどであるということです。 90歳を超えると、健康な方でも食べられる食品 が減ってきたり、場合によっては普通の食事は噛 めない、飲み込めないなどの問題で特別に柔らか く調理した食事や半流動性の食事でないと摂るこ とが難しくなる方も増えてきます。そんな方では 体力、筋力が減少し、なにか疾患があるわけでは ないけれどどんどんと運動機能が低下していく 「フレイル」がおきます。このフレイルを防ぐこと が人生100年時代の最終盤で、いかに不自由を減ら し快適に過ごせるかの分かれ目になってきます。 そのためにはもちろん、しっかりと食事を摂る ための歯と口が重要です。 健康だから大丈夫、ではなく健康の先に、百歳 まで自分らしく快適に生活するための準備として 歯と口のメンテナンスにもご注意いただきたいと 思います。 【歯の健康シリーズ】 T O P I C S 兵庫県歯科医師会 地域保健委員会委員長 西村 望 人生100年時代と「健康」 14 兵庫経協2024年秋号

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