「兵庫経協」2021秋号

「オーラルフレイル」とは「口腔の(オーラル)衰 え(フレイル)」を意味する言葉で、「健康ではなく、 まだ大きな病気にもなってない」健康と要介護と の中間の状態を示します。 人間は加齢とともに、全身の機能が衰えると同時 に口腔の機能も衰え、それにより関連する別の部位 にトラブルが起こされやすいといわれています。 例えば、歯の欠損を放置することによって嚙み 合わせがおかしくなり、全身のアンバランスに よって転倒しやすくなるなど、口腔のトラブルが 原因で全身の機能障害につながるケースは少なく ありません。 さらに他の例を挙げると、口腔のトラブルでう まく噛めなくなると食べられる物が制限され、そ の結果栄養が偏るだけでなく、食事の楽しみや体 力も減退します。口腔の機能が落ちることで、発 音や会話、呼吸などの機能が低下し、外出や運動、 人と会うことがおっくうになっていきます。これ が運動不足による体力の低下や精神的な老化につ ながり、生きる意欲や活力さの低下になっていく とも考えられます。 「オーラルフレイル」の症状は 1.食べこぼす、飲み込みにくい、むせる 2.滑舌が悪い、発音しにくい 3.噛みにくい食品が増える 4.口が乾燥する、口臭が強い などが挙げられます。一つ一つは日常生活に大き く影響しないので、年齢を理由に仕方ないと思っ てしまいがちです。 「口の健康への意識の低下」から、誤った口に 関する健康観による食習慣の変化、さらに老化も 重なり機能低下も進みますが、些細であることか ら、自覚することなく潜在的に進行しやすい状況 にあります。特に柔らかい食品が多い現在の食事 環境も理由の一つです。 それでは、「オーラルフレイル」を予防するには どうしたらいいのでしょう? 1.食事 一日三食、決まった時間に食べる。噛 み応えがあり栄養バランスに配慮した食事を摂 る。家族や仲間と一緒に楽しく食べる。 2.運動 出かける時はなるべく徒歩で出かけ る。階段を積極的に上り下りする。テレビを見 ながら足の運動をしてみる。 3.お口の健康 健康な歯がないと、おいしく食 事ができなかったり、食いしばれず力が入りに くくなります。定期に歯科医院に通いメンテナ ンスや治療してもらう。 4.社会参加 自分ができることを見つけて地域 のボランティア活動に参加してみる。 これらを意識し日常生活を楽しく過ごすことが 大切です。 また、オーラルフレイルとかかわりが深い「8020 運動」というものがあります。これは厚労省と日 本歯科医師会が平成元年から展開している運動で 「80歳まで20本の歯を維持し、よく噛んで食べら れるようにしよう」と推奨するものです。当初我 が国の8020達成者はほんの数%であったものが、 現在では50%を超えるほどになっています。 高齢になっても健康な歯がそろっていて、しっ かり噛める人は、口腔の筋肉や骨格も若い状態を 保ち、周囲の人とのコミュニケーションも円滑に できて、健康寿命が長いことが知られています。 人との交流の機会を前向きに作り、心身共に健康 な長寿社会を目指しましょう。 【歯の健康シリーズ】 T O P I C S 知 っておきたいオーラルフレイルの 話 兵庫県歯科医師会 地域保健常任委員会委員 金澤 秀孝 12 兵庫経協 2021 年秋号

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